河鍋暁斎 羅漢図
全体630mm×2080mm
絵495mm×1490mm
河鍋暁斎の羅漢図ですが正確にはこの図のタイトルはわかりません、これもネットのオークションで
購入しました、この絵には暁斎の全てがつまったような傑作です。
戯画・妖怪画・仏画、登場するのは獅子・鬼・羅漢・白衣観音・龍・山羊等、ゆっくり見ても見飽きない
ような画面構成なっており、羅漢さんの視線の先には岩屋に観音様が座っています。
庚戌 春 清和月 暁斎 (かのえいぬ はる せいわづき きょうさい) と読めます、作成した
年月を示すのか作品のタイトルを表すのかわかりません。
略歴は1831年下総国(茨城県)で生まれ、江戸に出て幼い頃には歌川国芳に入門、その後に
狩野派の前村洞和に入門、洞和の死後、狩野洞白に就く。独立して秋元藩の絵師坪内家の養子
となるが、本人の素行不良で離縁される。
1870年に上野の書画会で新政府を揶揄し投獄される。その翌年に狂斎から暁斎に画号を改め
ます、規制が緩む幕末から明治にかけて世相を皮肉った絵を数多く出しています。
羅漢さんが持っている器からお香のような煙が上がり、龍が呼ばれて出てきたところです・・・
おそらくは持ち物とか仕草で登場人物が誰かわかるようになっていると思いますが私にはさっぱりわ
かりません、誰かわかれば教えてほしいものです。
暁斎は登場人物が多い群像作品も好んで書いています、多数の登場人物は誰だか当てる楽しみも
あり、時間をかけてゆっくり見てまた新たな発見をする魅力のある作品です。
こちらはネットオークションで7万で購入しました、送られてきて実物を見て本物だと確信しました。
本物と断定した理由はまず絵が絹本肉筆画で絵筆の毛までついていた事、下絵もはっきり残ってい
た事、例え暁斎の弟子でも書けない特徴的な筆づかいである事、以上の理由で本物であると確信
しました。この絵と同じパターンの絵もネットオークションで見た事があります、暁斎の得意な図案だ
と想像されます、同じ図案でもこちらは出来が良く完璧で歌川国芳の戯画や狩野派ごちゃまぜの
暁斎テーマパークと言えるような作品です。
登場人物のユニークさは他の暁斎の作品の中でも群を抜いています、戯画や妖怪画ばかりが注目
される暁斎ですが、この絵を見れば「それが何が悪い!」と言ってしまいたくなります。
辻惟男さんの著書、奇想シリーズ以降、江戸期のアウトサイダー的な絵師が見直され
グロテスク・マニアック・ヘタウマ・江戸後期の浮世絵や肉筆画家の若冲や蕭白、白隠、芦雪等の
面々が現代人に大人気となりました。
現代美術で村上隆さんの五百羅漢図がありますがこの作品とイメージがかぶります。
狩野一信に影響を受けたと言っていますが、狩野派のオマージュで満ち溢れた作品です。
暁斎は駿河台狩野派であり国芳門下でもあり、江戸でも明治でも活躍し、一つのカテゴリーに
はまりません。狩野派は粉本主義で狩野派であり続けなければなりませんでした。最強の
絵師軍団がもし自由に何の束縛も無く絵を書いたら、どれほど凄い絵が書けたでしょうか、
暁斎だけがそれをただ一人実現させて狩野派の終焉を迎えました。
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